執筆者: Claire Rutkowski、最高イノベーション責任者
Bentleyの最高イノベーション責任者であるClaire Rutkowskiが、競争の激しい環境や業界で従業員の離職を防ぐ方法についてのご質問にお答えします。
-
01
多様性がイノベーションの重要な推進力であることは、広く認識されています。多様性の高い企業は多様性の劣る企業と比較して、高い利益を上げ、優れたアイデアを生み出し、しっかりしたエンゲージメントによって良質な文化を提供することは、さまざまな研究結果によって明らかになっています。しかし依然として、インフラ業界では多様性を推進するための実効的な手段がなかなか見つからない状況です。米国国立科学財団が最近実施した調査によると、女性が理工系の学士号取得者に占める割合は50%に達しましたが、インフラ業界就業者に占める割合は約35%に過ぎず、しかもその収入は男性よりも約25%低いという結果でした。同様に、人種的多様性も過小評価されており、インフラ業界における非白人労働者の割合は合計24%にすぎません。障害者はさらに過小評価されており、インフラ業界の労働者に占める割合はわずか3%です。建設業界に注目すると、さらに暗澹たる状況です。米国労働省労働統計局が2021年に実施した調査によると、建設関連の専門技術者における女性の割合はわずか9.9%、黒人は6.2%、アジア人は2%でした。建設業界はこの現状をさらに改善できますし、改善しなければなりません。
多様な人材を確保して離職を防ぐことは、企業に不可欠です。多様性を高める方法はさまざまですが、まずは上層部の意識改革が必要です。CEOや社長など、すべてのトップリーダーが連携し、多様性を最重要課題に掲げる必要があります。従来は人材の採用先とみなされなかった、多様性のある人材が集まる求人情報サイト、名門ではない大学、マイノリティ組織などから人材を探しましょう。採用ツールを活用して、採用担当者や採用マネージャーが目にする履歴書から名前を削除するなどの対策を行うことで、無意識の偏見を減らせます。面接対象者にマイノリティの候補者を含めることを義務付け、マイノリティに対するSTEM教育とインターンシップを支援しましょう。
しかし、それだけでは不十分です。現在の社内の権力構造を詳しく調べる必要があります。多様性は、平等性の一環である必要があります。自身と同じような属性を持つ人材が社内で高い地位に就いていなければ、従業員が会社を離れる可能性は高くなります。会社の上層部におけるマイノリティの割合は適切でしょうか。メンタリングなどのリーダーシップ開発プログラムを実施していますか。マイノリティが助けを求められるようなコミュニティが会社に根付いていますか。そうでなければ、従業員は会社を去って行くでしょう。
最も重要なのは、多様性を支持し称賛する文化の創造と維持に、意図的に取り組めるようにすることです。たとえば、無意識の偏見やハラスメントに対応するための多様性トレーニング、大々的な多様性イベント、目標達成イベント、過小評価されているグループの積極的な昇進や報奨金提供などの施策を行います。このような努力によって初めて、私たちの業界は本当の進歩を遂げることができるでしょう。
-
02
ハイブリッドワークは定着の兆しを見せています。ほとんどの企業は、すべての従業員が常にオフィスに出勤し、同じ時間帯に勤務するような管理体制ではなくなりました。少なくとも、何人かのチームメンバーは自宅や別オフィスで勤務するようになっています。その結果、軽く飲みに行ったり休憩中に雑談したりすることで従業員の仕事ぶりを確かめていた管理職にとっては困った状況になっています。コロナ禍によって、管理職は新しい管理スキルとリーダーシップスキルを学ぶことを余儀なくされました。これはもはや一時的な対策ではありません。ハイブリッド型チームで効果的にリーダーシップを発揮するには、いくつかの重要なスキルを実践して、常にエンゲージメントを促進し維持する必要があります。
連帯感の創出 – グループはワンチームであることについて話しましょう。チームの全員が企業戦略を理解し、チーム全体のビジョン、使命、目標を把握するようにしてください。各メンバーが自らの日常的な業務をチームの目標、さらに企業戦略全体と結び付けて考えられるようにすることが必要です。さらに、あなたを含めたチームメンバー全員が、お互いに支え合う関係にあることも認識しておきましょう。
信頼の構築 – あなたがチームを信頼していること、最善を尽くすチームだと信じていることを、チーム全員に知ってもらいましょう。誰がオンラインで誰がオフラインなのか、細かく管理しないでください。メンバーが最高の成果を上げてくれると期待していれば、たいていの場合、それを手に入れられると信じてください。
目的を定めた予定の設定 – リモート勤務のチームメンバーとも、出勤しているチームメンバーとも、1対1で話し合える機会を必ず設けましょう。さらに、チーム全体の会議を定期的に開催し、これまでの実施状況と今後の予定、そして現在の状況が年間目標にどのようにつながるかを全員が把握できるようにします。
パフォーマンスの測定と監視 – パフォーマンスの測定と監視を行う際には、明示的であること、一貫性があることが求められます。目標は測定可能でなければならず、達成と連携に関する議論は、定期的な従業員エンゲージメントの中で行う必要があります。
楽しみながら – 従業員の交流を促すことは、あなたの仕事ではないかもしれません。しかし、従業員は別々の場所で働いていて、食堂で気楽に雑談したり、ケーキを買ってきて同僚の誕生日を祝う機会もない場合がありますから、このような機会を作るのはあなたの仕事です。予約なしに任意で参加できる議題のない「雑談目的のビデオ会議」などを計画して、おしゃべりの機会を作ってみましょう。あるいは、ビデオ会議を始めるときに全員に自分の机や窓の写真を共有してもらうという方法もあります。オンラインのスカベンジャーハントや仮想協議を賞品付きで開催するのもよいでしょう。結局のところ、あなたの企画の内容はそれほど重要ではありません。従業員同士がつながるための場と機会を作り出すことが重要なのです。