執筆者: Claire Rutkowski、最高イノベーション責任者
「デジタル化を進めたいが、何から手を付ければよいのかわかりません...」
企業にとってデジタルトランスフォーメーションは、目新しい言葉ではありません。建築、エンジニアリング、建設(AEC)業界は、従来から他の業界よりも変化が遅く、後追いする立場になりがちです。資源の不足、気候変動の激化、人口の増加、インフラの老朽化、急速な都市化など、この業界の変化を促す世界的マクロトレンドは枚挙に暇がありません。コロナ禍によって、大きな変化に巻き込まれても私たちはそれに順応し、繁栄できることが証明されました。
単純に紙の書類を電子PDFに変換するだけでは、デジタル化とは言えません。技術的にはデジタル化と言えますが、そのデータは価値の限られた形式のファイルにまだ閉じ込められた状態です。本当の意味でのデジタルトランスフォーメーションには、業務の進め方を再考し、顧客中心のアプローチによって、デジタルプロセスを適用してデジタル出力を得ることが含まれます。AEC業界におけるデジタル化とは、測量、検査、リアリティキャプチャにおけるフォトグラメトリーやドローンの活用から、人工知能、機械学習、高度な解析、レコメンデーションエンジン、生成設計、コンポーネントベース設計まで、幅広い分野が対象となります。
デジタル化の視点から見た場合、自社がどのような段階にあるのか、どのように判断できるでしょうか。McKinseyやGartnerなどのアナリスト企業が成熟度モデルを提供しています。しかしこのようなモデルは、きわめてすぐに複雑になります。わかりやすくするために、ここでは組織を簡単に評価するために役立つ3層のモデルをご紹介します。
集中して取り組むべき点とは
それは組織の出発点、変化を求めて吸収する能力、利用できるリソースによって異なります。他の成熟度モデルと同様に、最も低い段階から最も高い段階に移行するには必ず中間の段階を経由する必要があります。近道はないのです。ただしデジタル化は、慎重に検討して計画し、実行できるプロセスです。ここでは、デジタル化を開始するためのアイデアをいくつか紹介し、各ティアで考慮すべき点を説明します。
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ここでは、現状のデジタル成熟度が低い組織で簡単に開始できる方法をご紹介します。
進行中のエンジニアリング作業をリアルタイムで設計できるツールを使用します。
Eメールを何度もやり取りするのではなく、簡単かつ安全に情報を共有できるツールを使用して、サプライチェーンでのコラボレーションを電子的に管理します。
コンポーネントライブラリの精選を開始して、組織内のノウハウを民主化し、ポートフォリオ全体にベストプラクティスを適用できるようにします。
ドキュメントのバージョンの削減、コンポーネントベース設計の活用、自動化の導入、プロセスの一貫性確保によって、業務全体の効率性を高めることを目標としてください。
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上記の基本的な準備が整ったら、この新しい段階で、中程度のデジタル成熟度へと歩みを進めることができます。現時点で、2Dから3Dに移行することで得られる効率化がすでに実現されているはずです。再利用可能なデータを特定するために、ポートフォリオ全体からインサイトを抽出することを検討してください。たとえば、設計で一貫して使用しているコンポーネントがある場合は、その各コンポーネントが物理資産でどの程度効果的に機能しているのかを確認します。また、リモート検査とリモート監視に基づいて、推奨事項とアクションを作成できることもあります。
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効率性と有効性を十分に達成した、デジタル化の進んだ組織のほとんどは、本当の意味での変革を起こすために必要な資金を持っています。
デジタルインテグレーターとして活動している一部の企業は、経験を活かして複数のベンダーとサプライヤを単一のプラットフォームにまとめ、顧客向けにライフサイクル全体のデジタルツインを生成しています。
新しい没入型メタバース体験を提供する企業や、持続可能性に関するレポートを作成する企業もあります。
デジタル成熟度の高い一部の企業は、顧客向けにデジタルツインのホストと保守を行っています。さらに、アクションを実施する必要がある状況を判断したり、エネルギー効率を高めて持続可能性を高める方法を提案したりするダッシュボード機能とセンサー監視機能を備えた、動的な共通運用システムを提供している企業もあります。
デジタル化は、私たちの社会も個人もこれまで経験してきた、避けられないプロセスです。AEC企業や業界全体にとって、デジタル化を進めることは容易ではありません。解決すべき問題は広い範囲に存在しています。Bentleyは、皆さんが現状の段階から始めることを支援します。2023年は組織のデジタル成熟度がどのような段階であっても、目標をしっかりと見据えて、前進し続けることをお勧めします。